志都美村の概観

 大和平野の西に連立する生駒金剛山脈は、北葛城郡王寺町において盆地の河川を集めて西に流下する辺りの低い平野を境として、北半を生駒山脈、南半を狭義の金剛山脈と称している。志都美村は、北はこの王寺町に接し、東は大体葛下川を境界に上牧村、南は二上村に、一部東南端は下田村に接している。西は王寺町及び大阪府と境している。東西1里5町、南北34町に亘り、総面積10.4平方キロを占めている。村の西端王寺町と接するところに標高274.9mの明神山がある。片岡丘陵中の比較的高い山は、七郷山および送迎山と呼んでいる。丘陵の西斜面は急傾斜しているが、東側の本村は極めてなだらかな丘陵地帯を形作っている。これは断層作用によるもので、明神山付近は火山系の熔岩大地を呈している。地質は主として片状花崗岩よりなり、各所に洪積層をみせている。
 本村の大部分はこの片岡丘陵地帯で、東に望む馬見丘陵の間に南北に細長く平野が展開し、ここに聚落が展開している。大字は上中・高・畠田・今泉・平野に別れている。産業は農業を主とし、養鶏もかなりさかんにおこなわれている。丘陵の谷間も水田に利用され、傾斜する扇状地帯の一部は畑地や果樹園となっている。河川は平坦地を南北に流れる葛下川を始め、送迎山間より発して東に流れる平野川、伊保川がある。

籏尾池

 また潅漑には河川のほか、南部丘陵地帯に畑お池、分川池などが利用されている。籏尾池は周囲1里34町、郡内第一の大きい池で、本村はもちろん上牧や下田、二上方面の潅漑にも利用されている。村の産業別就労者数をみると、農業人口が最も多く、運輸通信等に従事するものがこれに次いでいる。
 交通は和歌山線が平坦地を南北に走っているが、村民は下田駅あるいは王寺駅によってこれを利用しなければならなかったので、かなり不便であったが、昭和30年末、当時の村議会議員及び村民の努力によって、この両駅の中間に志都美、畠田両駅が開設されたので非常に便利になった。近年奈良、大阪方面への通勤者が増加してきた。主要道路は平坦地を南北に縦断する県道があり、南は下田に於いて国道165号線と、北は王寺で国道25号線に連絡している。人口は昭和30年度国勢調査によれば、村の世帯数563、人口3172人(男1589、女1583)となっている。人口の動態は他町村に比し大体固定していて変動が少ない。1平方キロメートルにつき人口密度は305人となっているが、この率は北葛城郡に於ける最低位を示している。したがって将来住宅地の経営、丘陵地帯の開発、工場誘致などによってこの村の発展が期待される。

石櫃(大字畠田出土)

 村の財政は、昭和29年度予算1388万円、同30年度1882万円となっているから、北葛城郡においても村の規模は小さい方である。教育機関は今泉の下寺に志都美小学校を置き、中学校は、隣村下田村に組合立香芝中学校がある。村には多くの古墳や古い寺院跡があって、考古学上注目されている。また、延喜式内社や古い由緒を持つ社寺が多く、郷土の貴い文化の歩みを無言で物語っている。